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<<<<<< 左大臣助平(スケヒラ)の悩み「湯治のこと」 >>>>>>

  日光の奥深く、湯の湖畔に湧き出でたる湯元温泉の一角に、温泉寺なる寺あり。確かにそこは寺に違いはないが、隣接の湯畑より引き込んだ熱き湯の掛け流したる、何とも趣きある湯殿があるとか。

 そこでは時折体洗わず飛び込み、その熱さに仰天、大慌て致す馬鹿者の姿など目にする事もあるようだ。
なにしろその慌て振りたるや、まるで縁側で心地よい昼寝を楽しんでいる猫に、石ぶつけたるが如き様相に似て、誠に面白き見物であるという。通曰く「世の中バチ当たりが居るからこそ面白い」とか。

 今冬の狂ったような寒さも、いつの間にやら走り去り、気付けば最早春爛漫。助平、他人に比して全ての機能の鈍さは生まれ付きなれど、入院騒動以来急な気候の変化に反応出来ず、右足の血の巡りに少々難があるようだ。頭への巡り悪いは仕方なきも、足の不自由は何かと逃げるに不便也。

 彼の特技といえば、何と言っても口の軽さと逃げ足の速さ。その一つに支障あっては、彼にとって正に重大なる事態であろう。

 他人の勧めには先ず従うことを良しとせぬ助平なれど、「日光湯元の温泉は誠にもって湯治に良き哉」と人伝に耳にしたのが妙に頭にこびり付き。

爺や: 助平様、湯元にお出ででしたら、是非温泉寺の湯にお入りくだされ。その効力たるや、口で言い表すは至難とか。

助平: なに、寺に温泉とな?そりゃ珍妙ではないか。行ってもよいが、勿論尼寺であろうな。

爺や 詳しいことは判りませぬが、ご婦人がご案内してくれることは確かでございます。しかも茶菓の接待もございますとのこと。助平様のこと、左様な話を耳にされましたら、勿論黙っている訳には参りますまい。

助平: 余は決してスケベイではない・・・が、オナゴは嫌いではない。ジイがそれ程余の体を心配しておるなら、行ってやろうではないか。しかしそのう::尼寺であろうな。

爺や: いい加減になさいませ。そのような不埒なお心構えでは、湯治の効き目は期待出来ませぬ。やはり助平様お一人では心配でございます。ここは一つジイがご一緒致しましょう。

助平: 結局ジイも行きたいなら、はなからそのように申せばよいではないか。年寄りの言うことは回りくどくていかん。

 四の五の言いつつ早速出かけ、銅(あかがね)街道をひたすら北上し日光へ。街とは反対方向に曲がるといろは坂。これを一気に登りつめ、中禅寺湖を横目に、みやげ物屋のヒヤカシ巡りを我慢しつつ、戦場ガ原をすり抜けると、間もなく湯の湖に辿り着く。

 湖畔を左に眺めつつ、目の前見れば其処は既に温泉地。温泉寺に着いて見れば、確かに湯畑に隣接したる佇まいは、なんとも風情に満ちたる処である。

 案内を請うと、たちどころに中年のご婦人現れ、にこやかに院内の説明受けるも、この二人、聞いている様子など全くなし。互いに相方が聞いているだろうと思い込んでいるから始末に悪い。

 そこは寺とは言えど、陰湿なる雰囲気など微塵もない。なにやら神社にも似た一種華やかな匂いを感じさせるようだ。本堂をキョロキョロ覗き見しつつ、湯殿に案内されると、あたかも時代劇の只中に飛び込んだかの如き、(水戸黄門で時折見られる由美かおるの入浴シーンに合いそうな)古き趣の小ぶりの湯殿。

 一坪半程の湯船には、間近の源泉より引き込まれた熱き湯が、惜しげもなく流れ込み、湯治の雰囲気醸し出すにはうってつけの風情なり。

 助平、幸い他に人のいないのをよい事に、いきなりザブンと飛び込んだ途端、「アッチッチ」。大慌てで湯から出ようと、必死で?まえた爺やの手。たまらず爺やも湯船にザブーン。

 「ギャーギャーワーワー」喚き散らしておる最中、常連のオヤジが顔を出し、「ヤカマシー、いい年コイテ何やってんだ、このバカヤロー。」
 この一喝で熱さ吹っ飛び、目ん玉は勿論、尻の穴やらフグリやら、あっという間に縮みあがり、体がシャキッとしたるはいと不思議。

 マ、だらけきった体が締まり、体の中では彼の意志などそっちのけで、オタオタしているとロクなことはないとばかり、血の巡りもそこそこ良くなった由。

 なれど助平・爺や共々、その後湯治の話をプッツリとしなくなったのは何故なのか。その訳を知る者は今のところ居ないようだが、彼等にとってそれは何より救いのようだ。

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