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<<<<<< 左大臣助平(スケヒラ)の悩み「恥さらし」Vol.2 >>>>>>

 小金持ちというものは、意外とケチくさい面もあるもので、つまらぬ事にしみったれるようだ。

宮痔も然り、飲み屋で大金使うはアホらしいとばかり、(大金といっても高々1〜2万)家で一杯ひっかけたる後、繰り出すのが常識的判断と思い込んでいるようだが、結局これが命取り。

 歯欠け婆様の歯の如き、半分欠けて殆んど用を足さない、気味悪さと淋しさの入り混じったネオンの下に立つ、どことなくチグハグなダブルの背広で、ポケットに手を突っ込んだ呼び込みのオニイサン。

宮痔うっかり目を合わせてしまい、慌てて下を向くも、オニイサンに素早く上着の袖つかまれ、「社長、ピチピチプリンプリンの、そりゃーンマソーな娘が待ってますぜ、ささどーぞ」とドスの効いたしゃがれ声。

助平、宮痔共々ンもスンもなく、「お二人様おなりー」の声と共に、真っ暗な店内に押し込まれてしまった。

中では、タバコ銜えたママさんらしきハスキーボイスの女。待ってましたとばかり、抱きかかえられるように、奧のソファーに導かれ、逃げ出す隙を見出す術など、最早思い付く余裕などあろう筈もない。

やや目が慣れてきたと思ったら、顔中化粧の塊の如き、素顔も年も全くもって判別不能なる女達に囲まれ、キャーキャーわいわい大騒ぎ。

助平達、何注文するでもなく、ビールにシャンパンウイスキー、景気よくポンポン栓抜く音にただ唖然。

宮痔はと見れば、既に一杯ひっかけ、ほろ酔い気分で繰り出した身の上故、アタフタしたのは最初だけ。

忽ち大名気分に浸りきり、斯かる事態に大して驚きもせず、女達の尻撫で回しニタリニヤニヤ、鼻下三寸。平素においても締まらぬ顔が、尚一層だらけ切り。

助平、ビクビクしつつも、最初のうちは遠慮がちにチビリチビリと飲んではいたが、女達に右から左から息つく間もなく酒注がれ、彼女達も一口飲んでは入れ替わり、これまた一口飲んでは入れ替わり。最早何本飲んだか訳分らず。

助平とて、斯様な場所での飲み方修行など、当然ある訳もなく、徐々に本性むき出し、やがてグデングデンのベーロベロ。

しかも宮痔に負けじと、女達の尻やら胸やらめったやたらと触りまくるが、何となく胸といい尻といい、その位置が随分と低く、しかも締りがないような気がしてならぬ。

宮痔は宮痔で、触りまくっている女達の恐ろしく色っぽい仕草は、確かに嬉しいようだが、その声の揃って野太いところが、気にならぬでもない様子。

何せ店内の薄暗さと怪しげなる雰囲気が、想像力をかき立て、酒の勢いもその後押しをするに、充分なる効果を発揮しておるようである。

 さんざ飲み騒ぎ、気付かぬうちに日付もとうに変わり、助平達はもとより女達もグデングデン。

財布の中身が如何に悲惨なる状況になっているか、など共に全く意に介さず。ママの「悪いことは言わないわ、止めておいたほうがいいかもよ。」の声も全く意に介さず、夫々隣に侍りしオンナを一人づつ外に連れ出し、一昔前の酔っ払いの常道路線たるラーメン屋になだれ込み。(実はこの地では、飲み屋以外に夜中に営業しておる店など、コンビニとラーメン屋以外に見当たらず。)

しかし、泥酔の彼等がまともにラーメンなど食せるはずもない。

店の主人も心得たもので、こぼされてはたまらんとばかり、テーブル席には通さず、カウンター席。案の定出されたラーメン、口に到達する前に、ほとんどこぼれ落ち、腹に納まるのは申し訳程度。

そもそも酔っていなくても不器用な男達が、右手で女の尻撫でつつ、左手で箸持つなど、どだい無理な話であろう。

助平、箸持つ手に少々疲れを覚え一休み。

訳判らぬ飲み屋と違い、照明も極めて明るい店内で、ふと強引に連れ出した、隣の女の横顔を見やれば、化粧は大半剥がれ落ち、緑の黒髪は何故か大きく後ろにズレ、白髪の地肌が見事に露出。

助平全く無意識に、触りまくっておった己の右手思わず引っ込めつつ、宮痔の連れの色っぽい女を見れば、ラーメンすする度に、ノド仏の上下に動く不気味さに、酔いも覚めたり進んだり。

宮痔は気付かず、相変らずイチャイチャ・ズルズル。しかし彼女$Kには触らせるが、彼が胸に手を入れようとすると、すかさずピシャリ!「イヤーンスケベ」と野太い声でクネリと逃げる鮮やかさ。

 さすがに助平徐々に薄気味悪くなり、「そろそろお開きにいたそうではないか。」と言いつつ逃げ腰の体。

「何をヌカスか、これよりラブホテルに直行ぞ。」と息巻き、駄々こねる宮痔を無理矢理引っ張り、千鳥足で夜明け前の路地裏を、あっちにヨタヨタこっちにフラフラ、中年男達の後ろ姿、哀れを通り越し、馬鹿馬鹿しくも滑稽也。

 翌朝というより当日昼近く、漸く目覚めた後、財布がスッカラカンなのも、何とも不気味なオンナ達と戯れまくったのも、全く記憶に留めないのは、二人にとってむしろ幸せなことであろうか。

ただただ双方、奧方に如何なる折檻を受けたかは知らぬが、かれこれ半月程はおとなしく仕事に精を出し、宮痔は【痔満】という名の饅頭を考案したとか。

それなる饅頭、何故か真ん中が割れ、餡がだらしなくはみ出しているそうだが、世の中分らんもので、これが不思議と中年族に受け、結構売れているそうな。


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