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左大臣助平(スケヒラ)の悩み「まんじゅう怖い」

  助平の乏しい脳ミソが今にも溶け出してしまいそうな、狂暑の日々もどうやら治まり、ほっと一息。 夕刻ともなれば、遠慮がちに聞こえる鈴虫の声。やがてその仲間達も誘われ、次第に広がる鈴虫たちの輪唱に、やっと感じる秋の気配。

柱時計の下に無造作に掛けられた、傾いだ暦に目をやれば、なんといつの間にやら神無月。秋の野草も一気に訪れた出番に大慌て。季節の移ろいをじっくりと実感できたのは今は昔か。

 近頃西上州にて庶民活動とやらに手を染め出したじゃんけんポン太、助平の館にて共々近年益々頼りなさを増して来た頭髪を秋風に撫でられ、助平共々思わずクシャミの六連発。廊下で真に心地良さそうに寝ていた猫のタマ、その大音響に驚きタマゲ、二尺余りも飛び上がり、庭の茂みに一目散。

クシャミも治まりどうやら一段落するや、今度は互いにケチの付け合い。

助平、ポン太の出っ腹にしみじみ目をやり「何ゆえメシ前なのに10人分も食した腹をしておるのか。」と呆れれば、ポン太負けじと「棺おけに片足突っ込んだ、よれよれジーサマの如きそのへそ曲がった腰を何とかせぬか、みっともない。」と応戦。

痛い所衝かれ、助平柄にも無く怒り出し、「何を申すかバカモンが、棺おけ近いはソチの方よ。その風船玉の如き出っ腹に針刺してくれようか。パチンと弾け、飛び出た腹わた、タヌキの餌にしてくれようぞ。」

互いに口だけ達者ではあるが、取っ組み合いするほどの体力気力まるでなし。

 やがて罵り合いにも疲れた助平、「秋ともなれば、やはり上州は温泉抜きでは語れまい。草津の湯にでもじっくり入れば、そなたの腹も少しは凹むであろう。そもそも強酸硫黄泉の効力というものは、殺菌力のみならず、体を芯から温めることによって、新陳代謝を高め、体中に潜む様々な毒素を体外に排泄せしめ・・・・」

ポン太堪らず「能書きはどうでもよいわ。多少なりとも腹が凹むならば、地獄以外は何処でも行くわ。まったくもって口ばかり達者でも、行動が伴わなけりゃどうにもならん。吾が連れてゆくゆえ、一緒に参れ。」

助平、ついつい余計なこと喋り過ぎたかと、悔やんでみても後の祭り。ポン太に拉致されるが如く、草津行きに付き合わされる羽目になり。

 ところで草津温泉といえば、湧き出る湯の量・質もさることながら、温泉街の賑わいも、上州のみならず、近県で右に出る温泉なしと言われるほどに、その名を知られる存在であろう。

湯畑周辺から、西の河原通りにかけて、様々な土産物屋・飲食店・老舗旅館が軒を連ね、その雰囲気たるや、これぞ正しく温泉地と言われる所以であろう。

 ゆっくりと体の芯まで温まるよう湯に浸かれば、やがて腹も空く。

心地よい空腹感を覚えつつ、西の河原通りをそぞろ歩けば、一際目に付くまんじゅう屋。

それぞれ試食しつつ、好みの味と店を選べるのがなかなか楽しいようだ。

なかには出来立てアツアツのまんじゅうを盆に載せ、「さあさあ出来立てのまんじゅうはいかが、これを土産に買っていかなきゃ、草津に来た意味がないよ〜。」と掛け声よろしく、道行く人達に配りまくる店もあるようだ。

しかし売り子もなかなかしっかりしており、ただただ配っている訳ではない。一度配ったら二度はあげないようで、結構覚えているものだ。

 実はポン太は以前面白づくで、この二度取りに挑み、見事に失敗し、売り子を呆れさせた苦い思い出がある。

この度はその復讐戦とばかりいきり立ち、どうやら早くも目的取り違え、箪笥や行李の中引っ掻き回し、訳の分からん衣装やらカツラやら片っ端から車に積み込み、助平もついでの如く車に放り込まれ、恐ろしく下手な運転にヒヤヒヤハラハラ連続の一刻あまり。

着いた時には助平、冷や汗びっしょりクッタクタ。

 なんとか湯畑見下ろす老舗旅館に入り込み、先ずは一風呂。実にゆったりのんびり湯に浸かり、助平ほっと一息。なれどポン太を見れば顔中汗して首まで浸かり必死の形相。

助平呆れ、「一度や二度入浴したとて、そのポンポン腹が凹む筈がなかろう。しかし何である、所謂草津と言えば1に温泉、2に美人…と言っても見当たらぬが、3・4が無くて5に饅頭というではないか。ソチの様子を見ておると、温泉を楽しむというには程遠い顔に見える。」

言ってもポン太全く聞く耳持たず。「この後は西の河原大露天風呂が待っておる。あの千畳敷き露天風呂なら汗も出ぬが、道すがらちょいと寄り道せねばならん処がある。」

 と言いつつ西の河原通りを行けば、案の定まんじゅう試食で足止まり、手馴れた手つきで一つ取り、うまそうに食す姿見るにつけ、助平溜息つきつつ「嫌な予感がしてならぬ、矢張り来るんじゃなかった。」と独り言。

とは言うものの、助平もついつい試食に手を出し、チビチビ食すは格好悪いとばかり、一気に口に放り込み、咬んだ途端、餡の熱さにびっくり。思わず手の平に吐き出し、結局フーフー・チビリチビリ。

 そうこうしつつ通りを抜け、露天風呂に向かうと思いきや、ポン太は駐車場へと一目散。車に積込んできた衣装やら変装道具を取り出すや、早速着替え出した。

車中にて変装し、車外に出たその姿、頬かむりした田吾作スタイルだが、これが何とも良く似合いサマになる。

そのまま土産物屋を言ったり来たりしつつ、例の如くまんじゅう屋の前で足を止め、一つもらおうと手を出せば、いかにも金の無さそうな田舎者には用は無いとばかり、そっぽを向かれもらえず。

癪に障ったポン太、がま口取り出し、これ見よがしに首からぶら下げ、「味見をせずに買う訳にはいかん。」と大声出せば、さすがに「まあまあどうぞ」と左右同時に差し出され、二つまとめて口にほおばりつつ、逃げるようにその場を後に。

駐車場に戻るや、またしても着替え。今度は地方の名士気取りの、和服に付け髭なるいでたちなれど、当然似合うわけも無い。しかし幸いまんじゅう屋には気付かれず無事ゲット。

ポン太いよいよ調子に乗り商社マンやら托鉢僧、何故か次々成功し、ついにはオカマスタイルにて打ち止めとばかり、まんじゅう屋の前に立てば、売り子はさすがに気味悪がり後ずさり。

ポン太すかさずにじり寄り、「ねえねえアンタとまんじゅうどっちがおいしいかしら。」と聞くや売り子は鳥肌たてつつ、「アタシャ不味くてとても食えたもんじゃありません。なんたってこのまんじゅうに勝るものはありません。」と逃げたい一心で、盆のまんじゅう差し出せば、しめた!とばかり二個いっぺん口に放り込んだが、まんじゅうだらけの腹の中、哀しいかな最早新たなまんじゅう受け入れる余裕はなかった。

まんじゅう飲み込んだ途端、目を白黒させ、道の真ん中で「ゲエー!」。当然売り子や通行人達大騒ぎ。「キャー!なによこの人、…変な女がヘド吐いてる。汚いったらありゃしない。」

 事の成り行き一部始終を見ていた助平、呆れを通り越し、むしろ感心しつつも、「何故吾が友人共には変竹林なアホばかりおるのか。」と嘆きつつ、放っておく訳にもいかず、ポン太を引きずり逃げるが如くその場を後に。

 翌日ポン太の腹囲は、凹むどころか5センチほど膨らみ、女房から「以後助平とは遊ぶな」と厳しく叱責されたそうだが、助平にしてみれば、とんだトバッチリであったようだ。



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