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<<<<<<<<<<< 最悪の忘れ物 >>>>>>>>>>>
隣家にはためく鯉のぼり、可愛い孫が居るんだゾとばかり、自慢そうに泳いではいるが、ナニナニ昔に比べりゃかわいいもの。
庭では野良猫、我が物顔でのし歩き、人の存在全く無視。昔の猫はも少し礼儀をわきまえておったなどと、くだらんことを考えている夫。
(妻)アータ、こうして縁側で拝見すると、随分とお髪が薄くなりましたね。
(夫)ウム、どうやら娘の親不孝が程好く影響しておるようだの。
“ズルッ”(出がらしの茶をすする音)
(妻)ほんに何故にあのように憎たらしい程父親に似て、ヒネ者なんでしょうネ。
(夫)“ズルッ”(垂れた洟をすする音)
カーサン、あたしに似てりゃ、モチット親を大事にしますよ。親不孝はむしろアンタの方の血ですよ。
(妻)アッ、ソーなんですか。アタシの血だと言うんですか。
じゃ言わせてもらいますが、アナタのお父様がいよいよご臨終の時、
荒かった呼吸が静かになったのを、勝手に楽になったものと思い込み、
傍らでまんがを読んでいたのは一体何処のどなたでしたっけ。
これほど親思いの息子は何処探したって居やしないでしょうよ。
(夫)それを言っちゃ身も蓋も無い。
……ン、そう言えば、今朝の味噌汁、実が入ってなかったな。
(妻)アー イヤダ イヤダ!もう堪えられない! 姑の意地悪に堪える妻は何処にでもころがっていますけど。
夫の意地悪に堪える妻はアタシくらいなものでしょう。 なんと悲しい定めでしょう。
(夫)チット ドラマの見過ぎじゃないのかえ?
(妻)トイレで大きいのをした後、流さずにしらばっくれる人が、意地悪でなくて なんだって言うんですか。
ドラマだってこんな場面ありゃしないわよ。
便器のフタ上げたときのアタシの腰抜かす姿を想像して、楽しんでいるんでしょう。ヒー、くやしー!
(夫)嘘だ!そりゃなにかの罠だ。
……と言いつつも、何となく水流した記憶蘇えらず、ジッと下を向き、あとはダンマリ。
こうして折角の休日は、気まずいままに過ぎて行く。
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