よろずや余之助ロゴ 余之助の独り言ロゴ
トップページへ移動
余之助の概要へ移動
こだわり商品へ移動
イベント案内へ移動
このページのロゴ
アクセスへ移動
関連リンクへ移動

左大臣助平(スケヒラ)の悩み 「中之条異聞」

  西上州は中之条といえば、渋川より長野街道を草津に向かう中継地の印象を抱くが、北の山あいには四万・沢渡といった、名の知れた温泉にも恵まれている、そこそこ風情ある町である。

中心街の南は浅間より流れ出る、吾妻川の清流が東へ流れ、街全体がなだらかな傾斜の中に、一昔前の賑わいとは随分と違う、今はひっそりと落ちついた静かな佇まいを感じさせる。

 街から温泉地へと続く街道を北上する途中、山際のちっぽけな集落に中之条の女親分なる女姓(にょしょう)が居を構えて久しい。

彼女の目方は24貫(約90kg)をゆうに越えているのは確かだが、量りの針が落ちつく前に決まって量りから降りてしまうので、定かな目方は判らない。

彼女、西上州のアネゴと言われ、諸人達から畏怖の目で見られてはいるが、ある筋の情報によると、実は見かけとは裏腹に、意外と臆病な面もあるとか。(確かに以前、助平が悪戯に、彼女の襟首にイモムシを放り込んだら、小便チビってしまったことがあったのは事実である。もっともその後、助平は散々殴られたのも事実である。)

 近頃この静かな町に物騒な噂が、まことしやかに囁かれておるそうな。

ここ数年来の激しい気象の変化が災いしたものか、山からエサを求めて下りて来る、猿・猪達が急増し、終には熊まで出没するようになったとか。

一昔前と比べると、近頃の陽気は季節の移ろいが全く読めぬ。この様な気違いじみた気候の変化をもたらした元凶は、当然人間達であり、ほとほと迷惑しているのはケモノ達であろう。

そもそも山に餌が無いから、仕方なく下りて来るのであって、なにも好き好んで物騒な里に顔出すつもりなど更々あるまい。

 台風一過、上州も一気に涼しくなり、やっと訪れた秋の風情。麓の民家では見事に熟した柿を、猿達がカラスと奪い合い。

たまりかねた婆様が、追い払おうと棒振り回せば、忽ち猿に奪い取られ、逆に追い回される始末。

あまりのくやしさに地団駄踏みつつ天を仰げば、今度は額にカラスのクソ喰らい、最早気力も失せ果てたご様子。

またある所では熊とばったり出くわしたオッサンが、果敢にも鎌持ち格闘に及んだが、尻に噛み付かれ腰抜かし、救急車で病院に担ぎ込まれたが、その恐怖と情けなさに、引きこもりジーになってしまったとか。

そのような騒ぎの最中に、追い討ちをかけるが如く噂が飛び交ったのが、痴漢出没騒ぎである。

かかる噂がアネゴの耳に入るや彼女「さすがに熊と出くわすのは吾も御免被りたし。なれど痴漢騒ぎは放って置く訳にはいかぬ。吾もオナゴである故、一度位は痴漢に失礼なる行為を受けるのも、経験上必要かも知れぬ。さすればその体験を基に、巷のうぶなオナゴ達に、必ずや危険回避の指南が出来るであろう。」と思うと、忽ちアネゴの好奇心はむくむくと湧き上がる。

翌日の夕暮れ時、パットをはめたる胸突き出し、弛みきったその尻を精一杯引っ張り上げ、痴漢の出没しそうな、人気無き薄暗き所を見つけてはウロウロするアネゴの姿あり。

痴漢はアネゴを見るや逆に恐れをなし、触らぬ神に祟り無しとばかり、その場からソロリソロリと遠ざかり。

と、そこに運悪く通りがかった中学生らしき小娘、スマホゲームに夢中になりつつ歩き、ふと顔を上げると目の前にアネゴの姿。それをうっかり変態男と早合点、「キャー!痴漢だ〜」と思わず叫びだし、これにはアネゴ大慌て。

挙句、声聞きつけた近所のオッサンに取り押さえられ、「テメー、この野郎、痴漢するなぞ、男の風上にもおけぬ奴だ。」と怒鳴りつつ、押えた所がアネゴのチチ。「アレー!あんた女か?」

ここでアネゴは大いにきれ、「痴漢だー!誰かこのスケベジジーを捕まえてくれー。」と近隣に響き渡る大音声。

最初に叫んだ小娘、何が何だか判らず、ただただ闇雲に「キャーキャーワーワー」。

オッサンもどうして良いか判らず、「あのう…ソノー」ワナワナヘドモド。

そうこうしている間に、キレたアネゴに二人共々「バカヤロー」とビンタ張られ、へなへなとその場に腰抜かしてしまった。

 結果として、彼女は一応痴漢の被害に遭ったことにはなったかも知れぬが、それが果たして危険回避の参考体験になったかどうかは、助平の知ったことではない。



トップページに戻る

(C)Copyright 2002-2013 Yorozuya Yonosuke All Rights Reserved.