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左大臣助平(スケヒラ)の悩み 「旅の恥は・・・」
人は誰しも働き盛りの時代というものがあるものだ。俄かには信じ難いかも知れないが、助平にも所謂働き盛りの時代は一応あった。
彼が四十代の頃は一応人並みに、仕事に追われていたようだ。
関東は勿論の事、長野から山梨、はたまた静岡へと飛び回ったそうな。
上州育ちの助平の目には、春の静岡は実に心地良い地に映った。
寒風吹きすさび、砂塵舞い上がる赤城おろしが全く無い、まるで別世界に来たかのように感じたようだ。
ある日、彼の地に営業行脚に向かった時のこと。浜松より静岡から焼津迄、様々な人達と会い、そこそこ冗談混じりの商談を済ませ、ほっと一息。
その晩焼津の相手と食事を共にし、地元漁港に揚がった、カツオやマグロで派手に飲み食い。
助平調子に乗り、少々酒を過ごしたようで、宿に着くや風呂もそこそこに、バッタンキュー。
翌朝、何とか目覚めはしたものの、昨夜の酒が祟ったか、少々腹具合がよろしくない。
それでも一応朝食はとり、出立までのひと時をベッドに寝転び、テレビを見ておったところ、何となく屁意を覚えた。
そこは個室で彼一人、誰に遠慮も要らぬ身である。
助平思いきり息張り、気持ちよく「ブー」と放った・・・つもりであったが、「ブー」の後「ビリー」ときたから、飛び上がる程驚愕し、慌ててサルマタ下して中見れば、凄まじき異臭を放つ中身がベットリ。
助平、どうして良いか分らず途方にくれ、止む無く恐る恐る奥に電話。
「もしもし吾だが、アノー・ソノー大変困ったことになった。」
兎にも角にも、やたらと世話を焼かせる、夫の居ぬ間の至福の一時。
朝食をのんびりとりつつ、テレビの朝ドラを楽しんでおった最中の不吉な電話。
「一体何事ですか!」
「アノー、実は屁をしたら雲古が出てしまった。どうすれば良いか判らん。」
「アタシに一体どうしろと言うんですか!」
これからそちらに行って、助平殿の尻を拭けというんですか。ご自分でさっさと拭いて、風呂場でサルマタ洗って、持って帰りなさいまし。」
「するってーと、本日吾はノーパンか?」
「昨日穿いたサルマタを、また穿くしきゃないでしょうよ。」
「しかし、部屋やベッドが大層臭いが…」
「そんなこと知りませんよ。得意のトボケでさっさとチェックアウトなさいませ。」ガチャリ
昔より『旅の恥は掻き捨て』ということわざがあるが、このような事態に当てはめることわざであろう、と勝手に納得。
しかしフロントでは顔を上げられず、うつむき加減でチェックアウトするや、逃げるようにその場を去って行った。
走り去る車中にて、今頃宿の掃除係は、如何なる面して掃除をしておるか、考えるとまたぞろ尻がムズムズ・腹がゴロゴロ。
あれから二〇年。最近括約筋が少々くたびれて来たようで、くしゃみが出てしまった時など、危ない場面に遭遇し、冷や汗かくこと再三あり。
その折、ふと頭をよぎった一句、
『クシャミと屁 共に出る身の 情けなさ』
編集部よりお詫びとお知らせ
この度は大変見苦しいお話で、読者の皆様にはご不快の念を余儀なくされましたこと、深くお詫び申し上げますと共に、くれぐれも真似などなされませんよう、お願い申し上げます。
尚若き頃のハジかき噺は、どなたも、どなたもお持ちのことと思います。今は時効の、しかし未だに思い出すと冷や汗の出るようなお話は、思いの他くたびれかけたシニアの方々に、活力を与えることにもなろうかと思います。
この度余之助では、シニアの恥かき合戦を企画致しました。シニアの方で、心当たりの方は是非参加していただきたいと思います。原稿を余之助宛、ご送付又はメールを頂ければ、幸いに思います。皆様の御参加、心よりお待ち申し上げます。
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