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左大臣助平(スケヒラ)の悩み 「徳兵衛の悩み」

   一応ケンチク家である文字屋徳兵衛は、助平の何とも頼りない友人達の一人であるが、実は彼の男、顔に似合わず意外と気が小さい。

彼を小心者に仕立て上げているその元凶は、 どうやら彼の母親にあるらしい。

無理もない、先年米寿を迎えた彼の母は、間違って女に生まれてしまったような、それはそれは大層な女丈夫であり、その男勝りの豪放なる振る舞いを界隈で知らぬ者は無いと言われて久しい。

 俄かには信じ難いが、彼女は何がそんなに忙しいのか、朝は早くから夜遅くまで、なんと自ら車を運転しつつ飛び回る日々。

事故をあまり起こさないのが不思議なようだが、スピード違反で検挙された時など、「あたしゃそんなにスピード出してないもの、あんたの計測がいい加減なのよ。」と堂々と喋りまくり、若い警官を呆れさせる事、一度や二度ではないようだ。

 毎朝彼女は朝餉を済ませると、自らハンドルを握り、さっさと外出。

日がな一日友人宅を転々と飛び回り、また時には友人達を誘い出し、神社仏閣お参り三昧と、兎にも角にもやたらと忙しい

。 これが選挙ともなればその張り切りようは半端ではない。朝も早よから選挙事務所に詰めっきりで、何やかやと世話をやき、事務所の中を右往左往で日が暮れる。

ほんの一昔前は選挙カーに乗り込み、何故かウグイス嬢で声張り上げまくったそうな。

    何れにしても帰宅は決まって八時九時。しかも家の敷居を跨ぐやいなや、「ああお腹ぺこぺこだわ。」とのたまい、夕餉を済ませ、のんびりとテレビのチャンバラドラマを楽しんでいる徳兵衛夫婦を尻目に、大盛り椀の飯を、たった三口でペロリ。しかも呆れることに、ほとんど噛まずに平らげ、更にお替りをするという。

彼女の恐ろしく丈夫なその内臓は、要するに食物をろくすっぽ咀嚼しなくても、しっかり消化してしまう優れものなのである。

それは戦中戦後の凄まじき混乱期を、潜り抜けて来た者だからこそ成せる業であろうか。

 またある日のこと、彼女が叔父貴の家を訪ねた時、玄関の式台から上り框に足を掛けた途端、後ろにひっくり返り、土間に頭をしたたかに打ちつけ、頭から顔まで血だらけ。慌てふためく家人達をなだめるかの如く、「ああ痛かった。でも大した事ないや。」と腰さすりつつ、ヨタヨタと上がり込みケロリ。

 徳兵衛も既に還暦半ばを過ぎ、息子に家業のあらかたを任せ、程々に仕事をこなしてはおるものの、母の様子を見るにつけ、おちおち隠居もままならぬようだ。

このお袋を何とか人並みな、もの静かなオバーチャンにさせる手立てはなかろうか、と無い知恵絞ってみたものの、これといった妙案など浮かぶ筈もなし。

この分だと、どうやら徳兵衛の方が先に逝く羽目になりそうだと思うと、多少気が楽になるようだ。

 徳兵衛の愚痴を延々と聞かされた助平、止せば良いのに口を出し、「いっその事、しょんぼりしているご老人達の話し相手をやらせてみるのも面白かろう。」

徳兵衛「馬鹿を申せ、ご老人達をあの調子でアチコチ引っ張り廻し、大飯食わせたら死んじまうぞ。」

ここでいつもの助平ならば、あっさり引くところであるが、少々調子付き「いやいや若き者が、心身不自由なご老人の愚痴を聞いてあげたりする場面はよく目にするが、クソ元気の良い高齢者が、同年輩の人達の面倒を見るのも面白かろう。

『オラの気持ちがお前等若いもんに解る筈があるまい』などと噛みつくヒネクレ爺も、この様な婆様には素直にならざるを得まい。

 結局徳兵衛まんまと乗せられ、始めた高齢者専門居酒屋サロン『ピンク婆』徳兵衛の母は言うまでもなく真に張り切り、クソ元気な仲間を誘い、毎夜ジーサマ達を相手に酒とお喋り。

お喋りといっても、客は同じ話題の繰り返しでも互いに間も無く忘れ去り、新鮮に感じてしまうから楽なもの。

酒もせいぜい一・二合で良い加減。呑み過ぎてひっくり返り、救急車騒ぎになるほど調子付いたジーサマもなし。

 噂を聞きつけ、恐る恐る様子を見に行った徳兵衛が目にした光景は、それは恐ろしいものであったそうな。

真っ赤な口紅これでもかとばかり塗りたくり、ロン毛のカツラにピンクのネグリジェ。しかも尻と乳は垂れ放題、おまけに見事なポンポコ腹のババ集団。

徳兵衛大慌てで家に逃げ帰るや、ふとんにもぐり込み、それっきり出てこない。





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