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<<<<<<<<<<< 桑之原左大臣助平という男あり >>>>>>>>>>
近頃巷を騒がす男あり。その名を桑之原左大臣助平という。注)「くわのはらのさだいじんスケヒラ」と読む、間違ってもスケベイと読んではいけない
この男、よろずや余之助の頭であることには間違いないのであるが、実は頭が良いのか悪いのか、とぼけているのやら、はたまた真面目なのか、全くもって諸人の判断の他なる人物のようである。
助平はとにかく大層忙しい男である。傍から見た限りでは、極めてのん気な男に見えるのであるが、何がそんなに忙しいのか、実は当人も全く理解していないところに問題がある。少々早めのボケなのか、はたまた何やら病的なる要因さえも疑いたくもなるが、何れにせよ誠に困ったものである。
彼の行動をよくよく観察してみると、およそ一ヶ所に落ち着いていたためしがない。要するに万事物事の処理が中途半端なまま、他の事に手を出すのである。仕事も女性関係も全てがいわゆるその方式であるからによって、始末に悪いのであるが、なにせご当人、3歩歩くとやってた事を忘れてしまうので、全くもって苦にならない。結局後始末した者にこっぴどく叱られ、その時だけはショゲルのである。
従って、よろずや余之助にいると様々な人達がやって来て、厄介極まりない事を助平に頼んでゆくが、実はこれほど当てにならないことはない。
マ、しかし助平の一見頼りになりそうな風貌に騙され、それぞれ安心しきって帰って行く姿を見れば、それだけでも充分に人助けであろう。
余之助の口煩き女子衆、こればかりは半ば諦めつつ、かくの如き結論を無理に見出し、自らを慰めているのである。何故この男に悩みがあるのかよく解らぬが、今後「助平の悩みシリーズ」を書かねばならぬ筆者を哀れと思っていただければ、何も言うことはありません。
≪解説≫
桑之原左大臣は実は官職ではない。聞くところによると、桑之原家はその昔、そこそこの資産家であり、いわゆるお大尽であったが、助平より遡ること数代前より、何の祟りか分からぬが、実は少々左巻きの跡継ぎしか出ぬようになったらしい。
故に、左巻きのお大尽と言われていたが、アホ故のお人好しが幸してか、何時しか体良く左大臣と呼ばれるようになったとか。めでたし。
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